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現代のクルマでも「慣らし運転」にマイナスはない。その理由と実際の効果とは?2025.05.23
かつて新車を購入したらまず取り組むべきことといえば、「慣らし運転」でした。
この「慣らし運転」という言葉、最近はあまり聞かれなくなりましたが、それでも車好きな方や、愛車を長く良いコンディションで維持したいと考える人たちの間では、今なお大切にされている考え方です。
では実際、現代のクルマにおいて「慣らし運転」は本当に必要ないのでしょうか? それとも、やはり今でも何らかの意味を持つものなのでしょうか?
この記事では、最新のクルマ事情に照らして「慣らし運転」の必要性や効果について、じっくり掘り下げて解説していきます。新車を買ったばかりの方はもちろん、中古車オーナーやクルマに興味のある方にも、きっと参考になるはずです。
そもそも「慣らし運転」って何?
まず、「慣らし運転」とは何かをおさらいしておきましょう。
慣らし運転とは、新車購入直後に車の各部品を馴染ませるために、負荷をかけず丁寧に運転する期間のことを指します。具体的には、以下のようなポイントが意識されます。
- エンジン回転数を抑えて走行する(だいたい3000回転以下)
- 急加速・急減速を避ける
- 無理な高速走行は控える
- 初期走行(おおよそ1000km程度)後にオイル交換を行う
かつてはこの「慣らし運転」が、車の寿命や性能に直結する重要な工程だとされていました。「慣らしを丁寧に行ったかどうかで、エンジンの当たりが変わる」といった言説もよく聞かれたものです。
現代のクルマは慣らし不要? 精密化の進化がカギ
近年、「慣らし運転は不要」とする意見も増えています。これはなぜでしょうか?
大きな理由の一つは、製造技術の進化です。エンジンやトランスミッションなどの構成部品は、かつてと比べて格段に高精度で製造されるようになりました。工場出荷時点でかなりの完成度を持っており、「なじませる」必要がほとんどなくなってきているというわけです。
特に国産車はこの傾向が顕著で、メーカー自身も「特別な慣らし運転は不要です」と説明していることが多くあります。これはMT(マニュアルトランスミッション)車よりもAT(オートマチックトランスミッション)車やCVT(無段変速機)車において顕著です。
それでも「慣らし運転にマイナスはない」と言える理由
では、「慣らし運転はもう必要ない」という結論で良いのでしょうか?
実はそうでもありません。
たしかに、昔のように神経質になって1000kmを超えるまで一切エンジンを回さない、といった極端な配慮は必要ないでしょう。しかし、「だからといって全く気にしなくてもいい」というわけではありません。
なぜなら、どれだけ製造精度が上がっても、クルマはあくまで“機械”だからです。エンジン、トランスミッション、サスペンション、ブレーキなど、それぞれが動きながら馴染んでいく過程というのはやはり存在します。
とくに初期の数百~1000km程度は、各部の摩擦や熱膨張の状況などがまだ完全に安定していない状態。そうした時期に急激な負荷をかけてしまうと、本来のパフォーマンスを引き出せなかったり、思わぬトラブルにつながる可能性もゼロではありません。
つまり、「慣らし運転をしなくてもすぐに壊れるわけじゃない」が、「したほうが確実に機械にとって優しい」ということです。
実は自然と「慣らし運転」になっている現代の走り方
とはいえ、最近のATやCVTを搭載した国産車では、ドライバーが意識しなくても自然と慣らし運転に近い運転になるケースがほとんどです。
その理由は、燃費性能や排ガス性能の最適化のために、車両側がエンジン回転数を抑えた走りを自動的に行う制御をしているからです。
市街地を普通に流れに乗って走っていれば、3000回転を超えるようなシーンはほとんどないはずです。つまり、知らず知らずのうちに“おとなしい運転”ができているわけです。
もちろん、マニュアル車やスポーツタイプの車では話が違ってきます。こうした車種では、ドライバーの操作にすべてが委ねられるため、意識的にエンジン回転数を抑えたり、急激な加減速を避けるようにしなければ、慣らし運転としては不十分になります。
「慣らしの終わり」には変化が訪れる? 実感できるタイミングとは
さて、慣らし運転をするとどんな効果があるのでしょうか?
一部のベテランドライバーの話によれば、「走行距離が1万kmを超えたあたりから、エンジンの“こなれ感”が出てくる」と言われています。具体的には、
- エンジンがスムーズに吹け上がるようになる
- 最大トルク付近のパワー感が増す
- ノイズや振動が減る
といった変化が感じられることがあります。もちろん、個体差や使用環境による差もあるため万人に共通するわけではありませんが、「やって損はない」と言えるのはこうした理由によります。
ときには“軽いムチ”も必要? 高回転域の使いどころ
ここでひとつ面白いポイントがあります。
慣らし運転を終えたあとも、ずっと低回転でおとなしく走り続けていると、かえってエンジン内部に煤(すす)がたまったり、調子が崩れてくることがあります。
たとえば、CVT車であってもローギヤモードやパドルシフトによるマニュアル操作を使えば、高回転までエンジンを回すことが可能です。こうした“たまの高回転走行”が、エンジン内部のクリーニングになる場合もあるのです。
もちろん無理に回す必要はありませんが、高速道路への合流時や、追い越し加速といった自然なシーンでアクセルをしっかり踏み込むことで、適度にエンジンに負荷をかけてあげることも、車の健康維持には大切なのです。
まとめ:愛車と“対話”しながら慣らしていこう
最終的に言えるのは、「現代のクルマであっても、丁寧な慣らし運転は決して無駄ではない」ということです。
むしろ、機械の特性や自分の運転スタイルを知る貴重な期間と捉えることで、よりクルマとの付き合いが深まり、結果的に長く快適に愛車と過ごすことができるようになります。
エンジンを甘やかしすぎてもいけないし、いきなりムチを打ちすぎてもよくない。
機械に耳を傾けながら、やさしく、そして時にはちょっと厳しく。そんな“慣らし”の感覚を大切にしていけば、クルマは確実に応えてくれるでしょう。
この記事のまとめ
- 昔ほど神経質になる必要はないが、現代のクルマでも慣らし運転に「マイナス」はない
- AT/CVT車なら普通に走るだけで自然と慣らし運転になることが多い
- 効果は1万km以降に現れるケースもあり、長期的に見るとコンディションの差に繋がる
- 高回転もたまには必要。無理せず自然なシーンでエンジンの性能を引き出そう








